腕時計を購入する際、「本当に買う価値があるのか」「もったいないのではないか」と悩む方は少なくありません。
実際に、時計購入で後悔している人には共通するパターンがあります。一方で、賢い選択をして長く愛用している人もいるのも事実です。
本記事では、時計購入で失敗する理由と、コストパフォーマンスの良い選択をするための具体的な基準をお伝えしていきます。
購入で後悔する理由
価格帯別の失敗パターン

時計購入での後悔は、価格帯によって異なるパターンがあります。
10万円以下の価格帯では、「安物買いの銭失い」になるケースが目立ちます。デザイン重視で選んだものの、数年で故障したり、飽きてしまったりするパターンです。
特に、海外の安価なファッションウォッチは要注意。見た目は良くても、耐久性に問題があることが多いのが実情です。
10万円〜30万円の価格帯では、満足する人も多い一方で、「中途半端な買い物」だとして後悔する例がも少なくありません。この価格帯は、国産の高級時計やスイス製の入門モデルが中心となりますが、懐に余裕のある方の場合、「もう少し予算を足せば、より良いものが買えたのに」という思いを抱きがちです。高級時計の入門として購入した場合はあまりそういうことはありませんが。
50万円以上の高級時計では、購入後の維持費用に驚くケースがしばしばあります。オーバーホール費用だけで数万円〜十数万円かかることを知らずに購入し、後々負担に感じる方が多いわけですね。
メンテナンス費の見落とし
時計購入で最も見落とされがちなのが、メンテナンス費用です。
機械式時計の場合、3〜5年に一度のオーバーホールが必要になります。ロレックスやオメガなどの高級ブランドでは、正規店でのオーバーホール費用は以下のような相場になっています(モデルにもよるのであくまでも相場としてお納めください)。
ブランド | オーバーホール費用(正規店) |
---|---|
ロレックス | 6万円〜10万円 |
オメガ | 4万円〜8万円 |
タグホイヤー | 3万円〜7万円 |
セイコー | 2万円〜5万円 |
この費用を20年間使用すると仮定すると、単純計算で、4〜6回のオーバーホールで20万円〜60万円の追加費用がかかる計算になります。
時計本体の価格だけでなく、長期的な維持費用も含めて検討することが重要でしょう。
使用頻度と価値のミスマッチ

購入時は「毎日使う」と思っていても、実際には月に数回しか使わないというケースは珍しくありません。
特に、ビジネス用とプライベート用を分けて考えている方は要注意です。結果的にどちらも中途半端に使うことになり、「どちらか一本にしておけばよかった」と後悔するパターンが多いのです。
また、高級時計を「特別な日にだけ使う」と考える方もいますが、年に数回しか使わない時計に数十万円を投じるのは、コストパフォーマンスの観点からあまりよくないという考え方もあるわけです。
資産価値への過度な期待
「時計は資産になる」という言葉を鵜呑みにして購入し、後悔するケースもあります。
確かに、ロレックスのデイトナやパテックフィリップの一部モデルなど、価値が上昇する時計も存在します。しかし、これは全体からみれば少数派であり、多くの時計は購入後に価値が下がるのが現実です。
特に、並行輸入品で購入した場合、正規品と比べて買取価格が大幅に下がることもあります。投資目的での時計購入は、よほど市場に詳しくない限りおすすめできません。もちろん、しばらく時計を愛用した後、購入価格より下がることを承知の上で売却し、新たな時計を身に着けるというのは全然ありだと思います。
とはいえ必ずしも購入だけがすべてではない時代が訪れています。レンタルという手段のメリット・デメリットについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
コスパの良い選択基準
予算設定の適正な考え方
時計購入で失敗しないためには、適正な予算設定が不可欠です。
一般的に、時計にかける予算は「年収の10分の1以下」が目安とされています。年収500万円の方であれば、50万円以下ということになりますが、これでも十分に良い時計を選ぶことが可能です。
初回購入の場合は、さらに控えめに設定することをおすすめします。 10万円〜20万円程度から始めて、時計の魅力や自分の好みを理解してから、段階的にグレードアップしていく方法が賢明でしょう。
正規品と並行輸入品の判断軸
時計購入時に悩むのが、正規品と並行輸入品のどちらを選ぶかという問題です。
正規品のメリットは、メーカー保証が確実に受けられることと、正規店でのアフターサービスが充実していることです。一方で、価格は並行輸入品より2〜3割程度高くなる傾向があります。
並行輸入品のメリットは、なんといっても価格の安さです。同じモデルでも、正規品より大幅に安く購入できることが多いのが魅力でしょう。
ただし、並行輸入品の場合、メーカー保証が受けられない、または制限があることがほとんどです。修理時の対応も、正規品と比べて不利になる場合があります。
判断の目安としては、長期間使用する予定で、アフターサービスを重視するなら正規品、価格を抑えたい場合は並行輸入品を選ぶと良いでしょう。
長期使用を前提とした機能性
時計選びにおいて、デザインも大切ですが、長期使用を考えると機能性も重視すべきです。
まず重要なのが、ムーブメントの信頼性でしょう。機械式時計の場合、ETA社製やセリタ社製などの汎用ムーブメントを使用しているモデルは、修理時の部品調達が比較的容易です。
視認性も見逃せないポイントです。文字盤の色と針のコントラスト、インデックスの見やすさなどを確認しましょう。特に、薄暗い場所でも時刻が読めるよう、夜光塗料が施されているかもチェックしておくと良いでしょう。
防水性能を重視するのも一つの考え方でしょうか。日常生活防水(3気圧防水)は最低限として、できれば10気圧防水以上のモデルを選ぶことをおすすめします。これにより、手洗いや軽い水仕事でも安心して使用できます。
ブランド価値と実用性のバランス

時計選びでは、ブランド価値と実用性のバランスを考えることが重要です。
有名ブランドの時計は確かに所有する喜びがありますが、価格の多くがブランド料として上乗せされているのも事実です。一方で、あまり知名度のないブランドでも、優れた技術力を持つメーカーは数多く存在します。
コストパフォーマンスを重視するなら、たとえば以下のようなブランドは人気ですね。
- セイコー: 世界的に高い評価を受ける国産ブランド。グランドセイコーは特に品質が高く、正規品でも30万円程度から選択可能
- シチズン: エコドライブ技術で知られる実用性重視のブランド。メンテナンスフリーが魅力
- ハミルトン: アメリカ発祥でスイス製造。10万円台でスイス製機械式時計が手に入る
- ティソ: スイスの老舗ブランドながら、比較的手頃な価格帯で展開
このあたりのブランドは、知名度とコストパフォーマンスのバランスが良く、初回購入にも適しているといえます。
購入タイミングの見極め
市場価格の変動要因
時計の市場価格は、様々な要因で変動します。購入タイミングを見極めることで、同じ時計をより安く手に入れることが可能です。
まず大きな要因となるのが、新作発表のタイミングです。多くのブランドが春(3〜4月)と秋(9〜10月)に新作を発表するため、この時期の前後は旧モデルの価格が下がる傾向があります。
為替相場も重要な要因です。円高の時期は輸入時計が安くなり、円安の時期は高くなります。特に並行輸入品の価格は為替の影響を受けやすいため、購入前に為替動向をチェックしておくと良いでしょう。
季節要因もあります。ボーナス時期(6月、12月)は需要が高まり価格も上昇傾向に、逆に2〜3月は需要が落ち着き価格も安定する傾向があります。
新作発表時期と価格への影響
各ブランドの新作発表時期を把握しておくことで、より良いタイミングで購入することが可能です。
ロレックスは例年4月頃に新作を発表します。この時期に生産終了となるモデルは、発表直後から価格が上昇することが多いのですが、逆に継続生産されるモデルは一時的に価格が下がることがあります。
オメガやタグホイヤーなどは、スイスの時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ」(3〜4月開催)で新作を発表することが多く、この時期前後は旧モデルの在庫処分が行われることがあります。
狙い目は新作発表から2〜3ヶ月後です。この時期になると、新作の話題も落ち着き、旧モデルの価格調整が一段落するためです。
中古市場での狙い目モデル
中古市場を活用することで、新品価格の半額以下で高級時計を手に入れることも可能です。
特に狙い目なのが、生産終了から5〜10年経過したモデルです。この期間のモデルは、最新の注目度は下がっているものの、まだ部品供給があり修理も可能なことが多いのです。
ロレックスの場合、並行輸入品の中古であれば以下のような価格帯で購入できます。
- エクスプローラーI(旧型): 80万円〜100万円(新品正規品は130万円程度)
- サブマリーナー(旧型): 100万円〜120万円(新品正規品は150万円程度)
- GMTマスターII(旧型): 90万円〜110万円(新品正規品は140万円程度)
中古購入時の注意点として、信頼できる販売店を選ぶことが挙げられます。大手の中古時計店や、実店舗を持つ業者を選ぶことで、アフターサービスも含めて安心して購入できるでしょう。
年代別おすすめ購入戦略
年代によって、時計に求めるものや予算も変わってきます。それぞれの年代に適した購入戦略をご紹介します。
20代は、まず1本目として実用性重視のモデルを選ぶことをおすすめします。予算は10万円〜20万円程度に設定し、セイコーやシチズンなどの国産ブランド、またはハミルトンなどの手頃なスイスブランドから選ぶと良いでしょう。
30代は、ビジネスシーンでも通用するブランド力のあるモデルを検討できます。予算は30万円〜50万円程度で、オメガやタグホイヤーなどが選択肢に入ってきます。並行輸入品を活用することで、予算内でより上位モデルを狙うことも可能です。
40代以降は、「一生もの」として長く使える高級時計への投資を検討できます。予算に余裕があれば、ロレックスやオメガの上位モデル、またはブライトリングなどの本格的な機械式時計も選択肢に入るでしょう。
どの年代でも共通して言えるのは、無理のない予算設定と、長期的な視点での選択が重要だということです。
時計購入で「もったいない」思いをしないためには、事前の情報収集と冷静な判断が欠かせません。価格だけでなく、使用頻度や維持費用も含めて総合的に検討することで、きっと満足のいく一本に出会えるはずです。